2025年12月31日 松阪
「せっかく伊勢神宮へ行くなら、ちょっと歩いて向かってみようか」
そんな、旅のノリによる安易な発想が、すべての始まりでした。あれよあれよという間に申し込んでいたのは、想像を絶する過酷なウォーキングイベント。
大晦日の朝、宿泊先のルートインで、のんきに「年越しそば」を啜っていたあの時の自分に教えてあげたい。数時間後、そこには未知の恐怖と地獄が待ち受けていることを……。

ウォーキング後にも再びこのホテルに戻ってくる予定だったので、大きな荷物はフロントに預け、身軽な装備で再出発。スタート地点となる「伊勢奥津(いせおきつ)駅」へと向かいます。

伊勢神宮参拝ウルトラウォーキングとは?
アクトレップ主催の、制限時間内に決められた距離を歩き抜く超過酷なウォーキングイベント。コースは170km、100km、そして私たちが選んだ60km。順位を競うレースではなく、自分との戦いです。 60kmコースは「グループウォーク」形式。各エイドステーション(休憩地点)で全員の点呼を取り、みんなでまとまって次の地点へ進みます。
11時頃、スタート地点の伊勢奥津駅へ。60kmコースには88名の猛者たちが集結していました。

エイドステーションでは飲食が提供されるため、軽装で参加できるのが魅力ですが……これが「歩き」のプロたちの集まりであることを、後で痛感することになります。


11:30頃スタート:最初は余裕の山登り
代表の激励を受けて出発!驚いたのは参加者のスピードです。装備は普通に見えますが、みなさん異様に速いんです。

最初は山道に入り、飼坂峠(かいさかとうげ)を越えていきます。

飼坂峠は伊勢本街道の難所として知られ、かつては旅人や参拝客が息を切らして越えた場所。歴史ある石畳や風情ある景色が残っています。登山に慣れている私は、このあたりまではまだ余裕でした。

13:30 第7エイド 道の駅「美杉」
お昼は山菜おこわと温かいスープ!外での休憩は思いのほか体が冷えるので、いかに中の休憩スペースを確保できるかが、その後の命運(体力)を握ります。少し長めの休息を終え、意を決して再出発。ここからは、精神をじわじわ削りにくる「延々と続くアスファルトの道」が幕を開けます。


夜の部:胃の疲れと襲いかかる寒さ
18:00 第8エイド 柿野神社
暗闇の境内で、フリーズドライの雑炊をいただき温まります。でもここで「トイレ不足」という罠が!女性用が少なく、冷えと戦いながらの行列待ちは地味に体力を削られます。

20:00 第9エイド ファミリーマート松阪小片野店
夕食はファミマのおでんと白飯おにぎり。温かさが染みる……けど、マップを見るとこれでまだ「半分」。残り距離の長さに、思考が止まりかけました。
23:00 第10エイド JR相可駅
真夜中の駅前の休憩スペースでアツアツのポトフを補給!でも「食べては歩く」の繰り返しに、胃腸も「そろそろ限界です…」と悲鳴。寒さとトイレの不安が重なり、メンタルもじわじわ削られていきました。

深夜0時:カウントダウンは道端で
2026年の幕開けは、まさかの「暗闇の道端」で迎えました(笑)。
第11エイドの田丸神社でいただいた甘酒が、もう泣けるほど心に沁みる……!

ここで、「登山靴」を選んだ大ミスを痛感。アスファルトの衝撃がダイレクトに響き、一歩一歩が重くなっているのを感じます……。周囲でもリタイアする人が出始めました。
限界の4時:外宮にて、ついにその時が
伊勢市に入り、度会(わたらい)橋でひと休み。ところが、立ち上がった瞬間……視界が真っ暗に!目の前がチカチカして焦点が合いません。
「ここで遅れるわけにはいかない」と必死に集団に食らいつき、フラフラの状態で4時半、伊勢神宮外宮に到着。残り10km。あと少し、されど10km。 激しい吐き気と寒さ、そして猛烈な眠気。思考回路が完全にショートした私は、ついに運営さんに「リタイア」を告げました。
6:00 ゴール地点:悔しさと安堵
運営さんの車で一足先にゴール地点の宇治公民館へ。 次々とゴールしてくる参加者たちの晴れやかな顔を見守りながら、安堵感と、「あと少し頑張れなかった……」という悔しさが入り混じります。豚汁もいただいたのですが、悔しくてあまり味を覚えていません(笑)。

9:00 完歩した友人と「赤福」でおめざ
友人はなんと一番最後ながら、気力で完歩!本当にお見事、あっぱれです。 とはいえ、二人とも内宮を参拝する元気は1ミリも残っていません。
「最後は赤福のぜんざいだけ食べて帰ろう」。その一心で開店直後の赤福へ。


約17時間、極寒の中を歩き抜いた体に、温かいぜんざいはもはや「神の食べ物」。 一口ごとに、凍りついていた感覚がゆっくり溶けていくようでした。
少し体力が戻ったところでバスに乗り、大混雑の宇治山田駅を経由して松阪へ戻ります。

疲労困憊の体を「GURUSPA」でデトックス
松阪に戻り、タクシーで温浴施設「GURUSPA(グルスパ)松阪」へ直行!ボロボロの足裏を直撃するハイパージェットバスで乳酸を押し流し、サウナと水風呂の交代浴で一気にデトックス。「お願い、筋肉痛になりませんように…!」と、もはや神頼みのような気分で湯に浸かりました(笑)。
元旦ランチも、やっぱり「一升びん」!
お風呂上がりは再び「一升びん 宮町店」へ。元旦から営業しているなんて、もはや神。 ランチの「松阪牛すき焼き定食」を迷わず注文!

最高級の松阪牛が胃袋に幸せを運んでくれます。 お腹を満たした後は、1日ぶりにホテルへ。翌朝まで、泥のように深い眠りにつきました……。
追記:リタイアの悔しさと、これからのこと
今回の挑戦は、正直に言って「完敗」でした!
リタイアした瞬間は「もう二度と嫌!」と思っていましたが、不思議なことに1週間も経つと悔しさがムクムク。毎晩のようにウォーキングの夢を見るほどでした(笑)。
次回の完歩に向けて、今回の「3つの教訓」を胸に刻んでおきます。
今回の挑戦で得た「3つの教訓」
✅靴は「アスファルト用」を選ぶべし
山道に強い登山靴も、硬い舗装路では足を痛めつける「凶器」に…。長いロード歩きには、何よりもクッション性重視のシューズ選びが重要です!
✅エイドの過ごし方が後半を左右する
休憩が長いと体は一気に固まります。しっかり防寒し、温かいボトルを持ち歩くなど「保温」の徹底が完歩への道!長蛇の列になるトイレは体力温存のために「スルーする勇気」も必要。
✅限界を感じても、まずは「一旦休む」
リタイア直後、少し休んだら驚くほど回復して後悔…。極限状態での判断は焦りがち。リタイアを決める前に「一旦休んで考える」くらいの心の余裕が大切でした。
今は「次は絶対にゴールテープを切る!」という思いでいっぱいですが、まずは長距離を無理なく歩ける基礎練習から。私の「本当の挑戦」は、ここから始まったばかりなのかもしれません。
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はじめての伊勢神宮ウルトラウォーキング / Nさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ